「おまえ以上におまえのことを知っているのは、このチームにはいない。
だから、おまえのピッチングについて、俺に教えてくれ。
そのうえで、どうしていくのがベストの選択かは、話し合いながら決めていこう」
驚いた。コーチからそんなことを言われたことがなかったからだ。
日本では、コーチが自分の尺度で選手を見て、自分の尺度に合わなければ自分がやってきたように修正するのが一般的だ。
アポダカコーチは、僕がどんなピッチングをする投手で、どんなピッチングをやりたいかをはじめに聞いてくれ、その方向性に沿ったアドバイスをしようと考えてくれた。
コーチの仕事は、選手が自分で考え、課題を設定し、自分自身で能力を高められるように導くことだ。
本書のタイトル『最高のコーチは教えない』には、「指導者=教える人」という常識を覆さないと、メンバーの能力を最大限に発揮させることはできない、という思いが込められている。
本書では、「教える」のではなく、「考えさせる」僕のコーチング理論と、実践方法を紹介する。
僕が取り組んできたのはプロ野球選手のコーチングだが、これはどのような世界でも通用する手法だと考えている。
部下の指導方法に悩む上司の方や、チームの育成を任されたリーダーのお役に立てば幸いだ。
ぜひお読みいただき、ご自分の世界に変換し、試してみてほしい。
吉井 理人 /
千葉ロッテマリーンズ投手コーチ
筑波大学大学院 人間総合科学研究科 体育学博士前期課程修了
1965年生まれ。和歌山県立箕島高等学校卒業。84年、近鉄バファローズに入団し、翌85年に一軍投手デビュー。88年には最優秀救援投手のタイトルを獲得。95年、ヤクルトスワローズに移籍、先発陣の一角として活躍し、チームの日本一に貢献。
97年オフにFA権を行使して、メジャーリーグのニューヨーク・メッツに移籍。98年、日本人メジャーリーガーとして史上2人目の完投勝利を達成。99年には、日本人初のポストシーズン開幕投手を担った。2000年はコロラド・ロッキーズ、01年からはモントリオール・エクスポズに在籍。03年、オリックス・ブルーウェーブに移籍し、日本球界に復帰。07年、現役引退。
08年~12年、北海道日本ハムファイターズの投手コーチに就き、09年と12年にリーグ優勝を果たす。15年、福岡ソフトバンクホークスの投手コーチに就任して日本一に、16年は北海道日本ハムファイターズの投手コーチとして日本一に輝く。
また、14年4月に筑波大学大学院人間総合科学研究科体育学専攻に入学。16年3月、博士前期課程を修了し、修士(体育学)の学位を取得。現在も研究活動を続けている。
佐藤 充宏 /
神奈川県横浜市出身のフリーアナウンサー、元NHKアナウンサー。青山学院大学を卒業後、1974年入局。東京アナウンス室の在任中には、『連想ゲーム』司会、『イブニングネットワーク』メインキャスター、『NHKスペシャル』ナレーター、『きょうの料理』などを担当。1995年にNHKを退職しフリーとなる。フリー転身の直後よりフジテレビ『ビッグトゥデイ』の司会を担当。『ビッグトゥデイ』終了後は同じくフジテレビ『土曜一番!花やしき』のプレゼンター役を務めた。その後、司会や講演などで活躍。
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